初着(お宮参り着)の話

お子様が生まれて、お七夜(命名)の次に気になるのがお宮参り。
産土神(うぶすながみ)様といって、生まれた地域を守る神様に生まれた子をご挨拶に連れて行き、地域の一員として認めてもらう。
ザックリいうとそういった意味合いの儀式です。

産後すぐに亡くなる命が多かった為、産後1ヶ月の間は神様からの預かり物。
ふとしたきっかけで、天に帰ってしまう儚い存在という扱い。
それが、1ヶ月を無事に過ごし、地域で生きる一員として地域の神様にご挨拶をする。
ということで、男女共に産後約1月で行うのだそうです。

この時、赤ちゃんが初めて身にまとう晴れ着が「初着(お宮参り着)」というわけです。
と言っても着用するわけでなく、上から掛けて使うため、掛け衣裳とも呼ばれますね。

初着を購入する場合、お宮参りだけでなく、男女共3歳の七五三で。
男児の場合は、数え歳で5歳の七五三をされる時に成長具合によって。
着用することができるので、頭の隅に入れておいてくださいね。

で、ここで疑問。初着の袖は写真のような平袖です。

初着ってなぜ、袖口を縫い止めない「平袖(大名袖とも)」なんでしょうね?

一説には、どんどん健やかに大きく成長して欲しいという願いを込めて、袖を縫い止めない。
とも言われているようですが、うちの社長曰く。
「着物じゃなくて、掛け衣裳だから」とのこと。

今の着物の原型となっているのは、小袖(そこで)と言われる衣裳。
平安時代は庶民の活動着であったとともに、貴族の下着だったんですね。
これが江戸時代に入って、男女共、小袖を常着として着るようになり、今の着物の原型となる。

この小袖は、袖の形状が今の着物と一緒。
袖口を縫い止めてある形式。

一方、初着のように袖を縫い止めない着物を広袖(ひろそで)と言います。
この広袖、狩衣(かりぎぬ)などに代表される宮中装束で、小袖の上に羽織られた上着。
そう、小袖のように紐で結んで体に固定せず、その上に羽織る(=掛ける)形で着用する物なんです。

赤ちゃんだから、袖を通すのが難しい→上から掛ける衣裳→掛け衣裳といえば広袖
ということでしょうか。
そう考えると、味もそっけもないもんですが・・・。
ここはあえて、こう解釈いたしましょう。

生まれて初めて、神様にご挨拶するための衣裳なんだから、
宮中でも格式のある狩衣などの上着と同じ形にして、これ以上ない正装を用意する。
神様に対して、最大限の礼をつくすことで、愛しい我が子の無事の成長だけでなく、人生の幸せをもお願いする。

そのための衣裳が初着であり、そのお袖が平袖である理由なんです。

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