御召って?その1

4月のちんがらやは「西陣御召」特集。


(矢代仁さんの矢羽柄の紋御召)

でもちょっと待って。
御召ってそもそもどんな物なの?
そんな疑問を良く耳にします。

ここから先は説明文章が続きますが、この記事で何が言いたいかというと。
「カジュアルばかりでなく、お茶着や略礼服として着用できる「御召」がある」
ということです。

御召の良さについては、また日を改めて語ります。
以下は、自信を持ってお茶着などとして御召になりたい方へ
「御召はカジュアルでしょ!」という認識に対する論点を
堅苦しく解説していきます。
ご興味のある方のみ、読み進めてください。

では、始めます。

着物を大きく2つに分類すると、「先染め/後染め」とか
「かたもの/やわらかもの」「織/染め」などと分類するのが一般的でしょうか。

先染めとは、糸を先に染色→織り上げることで模様を生み出す物。
後染めとは、白生地を織り上げたのち、友禅や絞りの技法で染色する物。

先染め・かたもの・織はほぼ同じもの。
後染め・やわらかもの・染めがほぼ同じものを指します。

先染めって、紬のことでしょ?
というのはその通りなのですが、厳密には「紬糸」を使うので「紬」なのであって
生糸を使った先染めの着物は「紬」にはとは言いきれません。

例外的に「大島紬」は、現在、生糸を使って織り上げられますが、
元々は紬糸を使って織り上げられた物でした。
その時の名残で、現在でも「大島紬」となっていますが、
厳密には「紬の定義」には外れる織物となります。

では、「御召」はというと、
生糸に特殊な撚りを掛けた通称「御召糸」と呼ばれる撚糸を用いた「先染め」の
「紬」ではない織物ということになります。

この「紬ではない」という部分が大切になってくるのは『TPO』を考える時です。

ご存知のように「紬」がカジュアルとされるのは、
かつてはB級品とされた「紬糸」を用いた織物だからです。
世界遺産にも認定された結城紬が、どんなに高価な物でも
「カジュアル・洒落着」とされるのは、現代に通じる着物の基礎が
出来上がった江戸時代に、紬が「庶民の物」として位置づけられたから
だと言われています。

一方、江戸の11代将軍に愛用されたとされる「御召」は
紬と同じ「先染め・かたもの・織物」の着物でありながら
時の権力者に愛用されるほどの品格を有していたことになります。

「御召=カジュアル」論に対抗する論拠としては
「御召は先染めだけど「紬」ではない」
ということです。


(江戸時代の御召は細かい縞や格子の柄だったそうです)

では、留袖や訪問着に匹敵する格を持つの?
という事ですが、この問いには柄の付け方の問題が出てきます。

そもそも、留袖や訪問着は「絵羽付け」という柄の付け方により
裾模様として柄をつける「留袖」と、
全体に絵羽づけを行う「訪問着」とに分かれます。

ちなみに実は「付下」は絵羽づけをより簡略化した柄付けの方法であって
着物の種類を指す言葉ではなかったんですよ。
現在でも、付下の事を「加工着尺」と表記してある問屋さん、結構あります。

御召に戻って考えると、先染めである御召は
裁断し、着物の形状(仮絵羽)を作って柄を染めつける絵羽づけで
柄を染色する事はできません。

ですから、そういう意味で、訪問着などには格が劣ると考えられます。

ただし、柄ゆきによっては「紋」を背負う事は十分に可能なことから
敢えて表現するなら紋を背負える雰囲気のものは
「色無地と同格」と考えるとわかりやすそうです。

武家柄の江戸小紋なんかも、紋を背負える格があり、紋を背負うと
色無地と同格として扱えますよね。

将軍家など武家に愛された「御召」は、乱暴な言い方をすると
「江戸小紋の先染め版」といった感覚で捉えてもいいのかもしれません。

「御召」の格を考える時、「カジュアル向け」とされる事が多い現代。
でもその成り立ちを考えた時、「柄」を考えれば、
江戸小紋と同様、柄の雰囲気次第では
お茶着や、紋を背負って式典の参列に略礼装として着ていけるということです。

以上、くどくどと述べてきましたが
様は、独特の良さを持つ御召を
あまり難しく考えず、楽しんで、どんどん着ていただきたい。
それだけの事なんです。

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