振袖にも種類があるの?〜格式の違いと着用シーンの目安〜
振袖って何でしょう?
袖がとっても長くて、豪華で、成人式にだけ着る特別なきもの。
きものに接する機会が少なければ、そんな風に思っている方が大半かもしれません。
このページでは改めて、振袖とは何か。
そして、格式のある振袖とはなにか。
について、お話したいと思います。
その前に、なんで振袖を着るの?
振袖ってどんな時に着るの?
について知りたい方はリンク先をご覧ください。
目次
<振袖の特徴>
振袖は名前の通り、振る袖=長い袖のきものです。
現在の日本では、未婚女性の第一礼装とされ、華やかな衣装としてだけでなく
着用する場によっては礼装としての品格も求められます。
一般的には袖の長さが3尺3寸(約125cm)以上の物が大振袖。
3尺(約113cm)以上の物を振袖。
2尺5寸(約95cm)で中振袖。
2尺(約75cm)で小振袖とされ、成人式などで良く見かけるのは中振袖姿です。
現代では、3尺以上をまとめて大振袖と呼ばれる事が多いようですね。
袖の長い順に大振袖>振袖>中振袖>小振袖と分類され、大振袖が最も格式高いとされ
・小振袖は卒業式や謝恩会などに
・中振袖は小振袖のシーンに加え、成人式、お稽古事、ご友人の結婚式の参列などに
・振袖、大振袖は中振袖のシーンに加え、ご自身のご結婚式のご衣装として。
また、園遊会などの格式の高い場への参列するときのご衣装としても着用可能。
格が上がるほど、自信を持って着用してもらえるシーンが増えていきます。
<ちんがらやが考える振袖の格式>
ちんがらやとしては袖の長さだけで振袖の格式を考えません。
格式を問う場合は袖の長さより柄の格と、雰囲気の重厚さを重視すべきと考えています。
なぜなら現代社会において、
1,そもそも振袖自体が未婚女性の第一礼装とされています。
2,着用される方の身長を無視して大振袖を誂えても、地面に袖を引きずって移動するのは現実的ではありません。
ただし小振袖の場合は、どうしても袖が短い分、雰囲気の重厚さに欠ける場合があるので
第一礼装と思われる場合は中振袖以上の長さは欲しいところですね。
当店で誂えて頂く場合は、ご本人様のご身長に合わせて、
最も見た目のバランスが美しくなる袖丈をご提案させて頂いています。
身長も見た目のバランスも十人十色。お誂えだからこそ可能なご提案です。
<格式の違いと着用シーンの目安>
柄による格の違い
第一礼装として考える場合、古典的な吉祥文様の柄が最も格式ある柄といえます。
同じ吉祥文様でも現代風にアレンジしすぎている物はファッション感覚が強くでてきますので
アレンジの少ない物ほど格式高いと考えていただいて間違いありません。
吉祥文様以外で格式高い柄は、正倉院文様や有職文様などがありますが
これらはどちらかというと、帯として取り入れられる事が多い柄。
吉祥文様の振袖に正倉院文様や有職文様の織の袋帯や丸帯を合わせる組み合わせが
最も格式高い装いになると思ってください。
(柄の格については、長くなるので其の内、別にまとめたいと思います)
卒業式や謝恩会 | 友人や親類の結婚式 | ご自身の結婚式 格式のある場 |
|
吉祥文様などの 古典的な柄 |
◯ | ◯ | ◯ |
ファッション性の強い現代的な柄 | ◯ | △ | × |
技法による違い
一口に振袖といっても様々な技法で作られる事をご存知でしょうか?
代表的なところでは、京友禅や加賀友禅などの友禅、絞、沖縄の紅型など。
特殊なところでは、総刺繍などもあります。
型染めと手描き・手差しの併用とか、友禅と絞の併用など
複数の技法を上手にミックスして、作り上げられる振袖も沢山ありますね。
友禅も、
・手描きや手差しという1点ずつ染め上げていく手描き友禅。
・型紙を使用して染めていく型染め友禅。
・近年ではインクジェットプリンタを使用して染め上げる機械染め友禅もかなり普及しています。
同じ型染めでも、純国産もあれば、海外染めだってあります。
当然、手間を掛けられた物の方が価格も高く、その分重厚感が増すので格が上がります。
最近ではインクジェット物もクオリティが向上していて、中でもハイクオリティの物は
僕たちのような専門店からみてもコストパフォーマンス的に「いい出来」と思える物もあります。
売り手やお店の人がきちんと技法を把握していて、相応しい値段で提供しているかどうかは
注意してほしいところです。
絞や紅型の物はやや趣味性が高いと評価されるのか、一般的には友禅や刺繍の物より
ファッション性が高い(格が下がる)と教えられもしましたが、
現代社会では、そこまで気にする必要は最早ほとんでありません。
色々な技法をミックスさせた物が多いので一概に格の違いを表にまとめるのは難しいですが、
敢えてまとめると以下の通りです。
卒業式や謝恩会など | 成人式/ご友人の結婚式 | 格式ある場にも相応しい |
低品質のインクジェット 低品質の海外染め |
高品質のインクジェット 高品質の海外染め 中品質の国内染め |
高品質の国内染め |
低品質の物は、残念ながら振袖があまり力を持たないので、簡易なパーティードレスと同程度の存在感となる一方、
高品質の物はインクジェットや海外染めでもそれなりの力を持っています。
周りの人と衣装を比べられても早々引けを取らない物もありますので、華やかさを求められる場でも
自信を持って着用頂けます。
高品質の国内染めの振袖は、ご自身が主役となるご自分の結婚式のご衣装としても着用できるだけの力があり
振袖で参加できるすべての場所で自信を持って着用して頂けます。
生地による違い
江戸時代までの日本では、資源が少なかったこともあり高級素材である絹を贅沢に使うことで
高位の人の正装としてきました。
これは現代でも格式を考える場合の根底にどうしても流れています。
ずっしりと重たい。まとっただけで、長いお袖がストンと落ちるようなしっかりとした絹の生地ほど
格式があり、風ではためくような軽い生地ほど軽い印象を与えます。
また、単純に生地が良いほど友禅などの発色が良くなります。
その為、仕事のいい振袖ほど良い生地を使っています。
反対に化学繊維やインクジェット物ではそこまで良い生地を使う必要がありません。
肌触りはもちろんですが、生地のしなやかさや物理的な重さも重厚感。
すなわち、振袖姿の格に大きな影響を与えるのです。
重厚感が出ない | 振袖としての華やかさがある | 重厚感がある |
化学繊維 低品質の海外産の正絹 |
中品質の国産の正絹 高品質の海外産の正絹 |
しっかりと国内で織られた重めの正絹 |
(正絹とは絹100%の生地のこと/海外産の糸を使っても織られたのが日本の場合は国産の織物となります)
ざっくりとした、2020年現在の振袖の相場についてはリンク先にまとめました。
ご興味ある方は、こちらもご覧くださいね。
もちろん、ここで挙げた格式や着用シーンの違いはあくまでも1つの目安です。
また、振袖に限らず着物姿の格は、帯合わせで大きく引き上げる事も可能です。
礼装とは、相手方に敬意を表し、心を込めて準備をする衣装のこと。
ご無理のない範囲で、しっかりと納得できるご用意をされたなら、
それはご家族の思いがつまった素晴らしい晴れ着だと言えます。
以上、如何だったでしょうか。
ちんがらやでは、ご家族の皆様の思いも大切にしながら、ご本人様が笑顔で晴れの日を迎えられる様に
丁寧にお話を伺いながら、最適なご提案をしています。
お母様の振袖を直されたり、新しくお誂えを検討されている方はぜひ1度、当店にご相談ください。
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