加賀友禅と京友禅

どうも。
ちんがらやの4代目です。

裏千家の茶道関係。
商工会議所青年部の関係の怒涛の事業が終わって、やっと本業に時間をしっかり取れるようになりました。

いや、本当。
この時期、行事が重なりすぎです。

さて、現在ちんがらやでは
『新春 フォーマル展』
を開催中。

そんなこともあって、今回は上のタイトルなお話です。
まずは、写真をご覧くだされ。

加賀友禅 訪問着の雰囲気の説明
京友禅 訪問着の雰囲気の説明

1枚目が加賀友禅。
2枚目が京友禅の訪問着です。

写真だけで分かった方。
お見事です。

プロだけじゃなく、染め物が好きな着物愛好家の方には、加賀と京の友禅の違いはわかりやすいものだけども。
全く知識のない方には同じに見えますよね。
そう言うものです。

<京友禅と加賀友禅の歴史的背景>
諸説あるけど、歴史の深さで言うと、京友禅の方が若干早生まれ。
京都で生まれた京友禅の技法を、加賀生まれの創始者が故郷に持ち帰ったのが今の原型と言われてます。

着物屋の先輩やうちの父からは、加賀100万石の前田家が、地元を京都に並ぶ文化都市として育成するために、京友禅に対抗して産業育成した。
なんて話も聞いてます。

個人的にはこの説が面白いと感じてますよ。
ここではその対抗説で話を進めていきます。

<雰囲気の違い>
京都は公家や商人の文化。
金沢は武家の文化。
なんて、言われてます。

ので、京友禅と加賀友禅にもそんな雰囲気の違いが見られます。

京友禅は、意匠化(文様化)された模様が多く、雅な印象が強く。
加賀友禅は、植物を中心とした写実的な文様が基本です。

<表現技法の違い>
雰囲気の違いは、表現方法の違いから生まれます。
同じ友禅というだけあって、基本的な技法は大きく変わりません。

糸目友禅といって、防染糊を下絵の輪郭に施し、その内側を彩色していきます。
染上って整理が済むと、その輪郭部分が糸の様に地色(生地の色)や挿し色(柄の色)に染まらず、白っぽく残るわけです。

この輪郭の糸目の部分。
京友禅は、金彩や銀彩でさらに染色したり。
金糸などで刺繍を施したりして、華やかさを引き立てることがあります。
写真でいう、花の輪郭部分。
中央奥の花は糸目がそのままだけど、手前の物は金彩が施してありますよね。

さらに、右手前の花は、糸目をそのまま残してますが、花自体に刺繍を入れてボリュームを出しています。

京友禅の表現方法の説明

加賀友禅はというと

糸目はそのまま残っています。
刺繍によるボリュームアップもありません。

逆に加賀友禅には
「虫食い」と呼ばれる模様(写真中央の花の外縁近くの点)や
「ぼかし」といういわゆるグラデーションが多用されます。

加賀友禅の表現方法の説明。

そして、何より大きな違いは色使い。
もう一度、両方の写真を比べてみてください。

加賀五彩(藍、黄土、深緑、古代紫、墨)という伝統色を基調とした加賀友禅は、京友禅に比べて渋い(明度が低い)色が多いのが分かります。

北陸の気候や武家の好みなどに合わせて磨かれてきた加賀友禅。
文化の中心として公家文化・商人文化の中で磨かれてきた京友禅。
どちらが優れているかじゃなく、どちらもそれぞの歴史・文化の中で育まれてきた良さがあるわけです。

長い間、それぞれの地域の作り手さんや今で言うデザイナーさんが、歴史風土の中で作り上げてきた、技法。

インクジェットプリンタなど機械捺染自体が悪いとは言いませんが、
培われてきた人の技。歴史の繋がり。
それは、職人さんの仕事にこそ宿るんだと思います。

人生の節目や、大切な人との繋がりのために装うフォーマルこそ、そういった意味で価値のある晴れ着をご用意して頂けたら。

現代日本を生きる、一人の若者(馬鹿者)としても、嬉しいかぎり。

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